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いーかわらばん vol.482

  • いーかわらばん
  • 株式会社アウトオフィス
  • 2023/12/27
  • vol.482

▼INDEX▼

■ 1. 時の話題

「 ウラノス・エコシステム」は産業データ連携の起爆剤?

■ 2. 山崎発「新天動説」時代の経営戦略(7)

経営戦略の手法はどんどん変わる?

■ 3. みんなの疑問!?(19)

「年収の壁・支援強化パッケージ」について教えてください。 

■ 1. 時の話題

<「 ウラノス・エコシステム」は産業データ連携の起爆剤?>

今回は、一般にあまり知られていない、しかし、今後の日本の競争力を左右す
るかもしれないキーワードを一つ、ご紹介しましょう。

経済産業省は本年4月、
「ウラノス・エコシステム」
と命名したデータ連携の取り組みを発表しています。

「ウラノス」という言葉をドラクエ11で知っている人もおられるかもしれま
せん。もともとはギリシャ神話で「天空の神」を意味しています。一方、「エ
コシステム」は「ベンチャーエコシステム」などで知られるように、外部の資
源と密接にリンクした「生態系」を表しています。

これは、第四の経営資源である「情報」、その情報資源の中核を担う「データ」
について、天空からの視点で欧米や中国に太刀打ちできる、あるいは世界のデ
ータと瞬時に連携可能な日本のエコシステムを構築しようという取り組みです。

アメリカではGAFAM((グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マ
イクロソフト)、中国ではBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)と呼ばれ
る企業により、検索エンジン、データ商取引、SNS、スマートフォンを通じて、
データのプラットフォームが構築されています。

それらのプラットフォーマーによって、地球上のデータの大部分がすでに支配
されているように感じている人も多いと思います。

しかし、実はそれらはB to Cの分野であり、全データの1割程度に過ぎないと
言う人もいます。残りのほとんどは、B to B、いわゆる「産業データ」であり、
まさにこれから本格的な国際間の覇権争いが始まろうとしているのです。

アメリカに対抗して、すでにEUでは、ドイツやフランスを軸に自律分散型の
データ連携システム「ガイアX」、さらにそのサブシステムとして自動車産業
では「カテナX」、蓄電池分野では「電池(バッテリー)パスポート」などが
立ち上がっています。

このデータ連携が実現すれば、たとえば災害が起きた場合、損害の現状を瞬
時に把握できることはもちろん、森林、土砂、道路、電波、エネルギー、救
助手段、食糧補給、医療体制などの産業データを駆使して、正確な予測とす
ばやい対応に結びつけることが可能です。ドローンやロボットもこういった
データがあってこそ、より真価を発揮することができるのです。

当然にセキュリティ面でのリスクは生じますし、軍事利用もあり得ます。この
分野の対策は極めて重要であることは言うまでもありません。

日本は、今まで、周辺業界を巻き込み、オープンイノベーションを実現するこ
とをあまり得意とはしていなかったのですが、世界の産業データの分野におい
て、真のプラットフォーマーに躍り出ることができるかどうか、重要な時期を
迎えています。

■ 2. 山崎発「新天動説」時代の経営戦略(7)

<経営戦略の手法はどんどん変わる?>

前回で、「新天動説」時代の経営戦略の序章である、「深く考える」シリーズ
は終了いたしました。ここからは経営戦略そのものの中身に入っていきましょう。

しばらくは、教科書的なありきたりのお話が始まるのかな、と思われるかもしれ
ません。

しかし、コロナ禍を挟んで、特にこの5、6年、世の中は大きく変化しました。
その間のご指導経験から、世の中一般の書籍やネットに記載されているような進
め方ではあまり意味がない!と感じることが多々ありました。したがって、一般
論からは大きく外れるような内容(私見)が頻繁に出没することを、あらかじめ
お断りしておきます。

皆様には、書籍やネットで見たものと、どこがどのように違うのか、ぜひ検討し、
よりお考えを深めていただきたいと思います。何回も申し上げていますように、
経営には「絶対的正解」はありませんので・・・。

もう一つ大事なことを付け加えますと、中堅・中小企業の経営戦略は「綺麗さ」
を重視すべきではないということです。上場企業が作成する「統合報告書」なら
ばともかく、そこに時間やエネルギーを注ぐのではなく、「現場力」に直結する
実質的な中身に徹していただきたいと思います。この点は今後繰り返しお伝えす
るつもりです。

今回は、「全社戦略」「事業戦略」「機能戦略」についてさらっとご説明をしま
す。このとおりに実践すべきかどうかは別として、この考え方は知らないでは済
まされない基本中の基本です。しかし、ここでも「私見」は満載です。

まず、全社戦略。これは、最近流行のカタカナを使うならば、
1 パーパス
2 事業間シナジー
3 事業ポートフォリオ
の三つについて、明確に方向決めをすることです。

策定者は、組織の形態や規模によって異なりますが、トップ陣、ホールディン
グスの役員や幹部、あるいは経営本部など、会社全体、グループ全体を俯瞰で
きる立場にいる人たちです。特に、ホールディングスがポピュラーになるに従
い、この全社戦略は大きな意味を持ってきました。

次に、策定時期ですが、戦略策定期間の最初であり、最後です。すなわち、最
初に策定者全員に提示されて、事業戦略、機能戦略策定の前提になるものです
が、事業戦略や機能戦略の内容次第で、再び全社戦略に戻って、修正・追加が
必要になります。

全社戦略は、今は、この程度にとどめて、次に事業戦略に入りましょう。

事業戦略とは、戦略的事業単位(SBU)ごとに、
1 顧客(市場)構造
2 商品・サービス構造
3 サプライチェーン構造
の三つについて、そのゴール(実現したい姿)と、ゴールに至るプロセスを
明確に設定し、実践に結びつけるためのものです。

教科書的には、ここで、SWOT、4C、5フォースを始めとする多くの分析を
行うことになります。これらの分析にはそれぞれ意味があり、実施することで
貴重な示唆が得られるのですが、その背景にある事業戦略の設定目的をしっか
りと把握しておかなければ、評論家になってしまいます。

事業戦略の最大の設定目的は、「独自性もしくは優位性の確保」です。言い
換えると、ターゲットとした顧客の立場に立って、自社や自社の商品・サー
ビスが「選ばれる理由」「指名される中身」(「ならでは」「だからこそ」)
をはっきりさせ、その維持・獲得プロセスを計画に落とし込むことです。

このことは、SWOT分析で「強み・弱み」を整理する場合に顕著に現れます。
たとえば「社歴が長いこと」はそれ自体は強みではありません。それがターゲ
ット顧客にとって「自社を選ぶ理由」「指名する中身」に確実に結びついて、
始めて「強み」になるのです。

次に、事業戦略の策定者ですが、各事業の「長」に位置付けられる人たちです。
実際の策定過程では、チームを作って、一定の範囲の人が参画します。実践す
ることが大事ですから、「長」以外の人も自らが主体となって策定することは
当然といえます。

個別の内容に関しては、後日お話ししますが、ここで非常に重要な点を二つ、
ご指摘しておきたいと思います。

重要点の一つ目。さりげなく「戦略的事業単位(SBU)ごとに」と記しました
が、実際には、この設定がきわめて難しい、というか、「肝」なのです。実は
これは全社戦略の「パーパス」に含まれるテーマです。「事業間シナジー」も
「事業ポートフォリオ」も、この戦略的事業単位が適切に設定されてこそ意味
を持ちます。

今までどおりの事業区分で適当に決めることは許されません。「深く考える」
でお話しした大局的、革新的な要素がきちんと織り込まれ、今はなくても将来
実現したい、将来実現すべき事業(場合によっては撤退すべき事業)が想定で
きて、真に「戦略的」と言えるのです。これをもとにM&A戦略も生まれます。

重要点の二つ目。それは、ゴール(実現したい姿)として、いつの時点を想定
するか、です。3年後?、5年後?、それとも10年後?でしょうか。

私は、最初の段階では期間を設定すべきではない、と考えます。なぜなら、た
とえば「5年後」と決めた瞬間、往々にして現状からの積み上げ発想になり、
「5年後にはこのあたりまで行けるかな?」という現在の延長になってしまう
可能性が高いからです。これは、私に言わせるともう「戦略」ではありません。

最初に期間を設定しない代わりに、私は、
「ターゲットとなる顧客の視点(立場)で、今考えられる、最高レベルの姿」
からスタートします。

しかも最初の段階では数字は排除します。パーパスがすべてです。そして、パ
ーパスに反しない限り、突飛な発想も否定してはなりません。一方で、その最
高レベルの姿を、可能な限り、ビジュアル化(見える化)することが大切です。
さらに皆で「本当に最高レベル? 顧客の視点?」を繰り返し自問自答する必要
があります。

これらをしっかり行なったうえで、その最高レベルをいつ実現したいのか、い
つ実現すれば価値があるのか、を考えます。

たとえばその最高レベルの姿を6年先に実現できれば望ましい、としましょう。
ならばそれを何とか少しでも早く5年で実現できるようにはならないか、その
ためには3年後はどのような状況を作りあげておく必要があるか、この1年は何
をすべきか、と考えます。これこそがバックキャスト発想であり、バックキャ
スト人材を生み出すための仕組みの一つです。

事業戦略の概要はここでいったん終了して、三つ目の機能戦略に入りたいので
すが、ここが最も従来の戦略手法から変化しているところかもしれません。長
くなりそうですので、次回、じっくりとご説明することにしましょう。


■ 3. みんなの疑問!?(19)

<「年収の壁・支援強化パッケージ」について教えてください。 >

岸田総理が打ち出した、「年収の壁・支援強化パッケージ」について、厚生労働省
から、概要が発表されています。

年収の壁と言われるものは、主なもので4つあります。
1.100万円(住民税)
2.103万円(所得税)
3.106万円(社会保険)
4.130万円(社会保険)

上記1.2.は税金の壁です。ここでご説明する年収の壁・支援強化パッケージと呼
ばれるものは、上記3と4の社会保険に関するものです。1と2の税金の壁について
は、数字だけ、頭に入れておいていただければ、と思います。

3.の106万円は、従業員数100人超(2024年10月からは、従業員数50人超)
規模の企業は、一定要件に該当する短時間労働者について、社会保険の被保険者に
しなければなりません。その要件の一つに、月額賃金が8.8万円以上であること、
という要件があります。8.8万円の12か月分は1,056,000円となり、これが社会保
険の第一の壁となります。

4.の130万円の壁とは、社会保険料の被扶養者の要件の一つに収入が130万円未
満というものがあります。これが社会保険、第2の壁です。

◆「106万円の壁」の対応
パート・アルバイトで働く方の社会保険加入に併せて、手取り収入を減らさない取
組みを実施する企業に対し、労働者1人当たり最大50万円の支援が受けられます。

手取りを減らさない取組みとは、社会保険適用手当や基本給の増額、所定労働時間
の延長などをいいます。

10月20日から、キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)の手続
きが開始されています。

◆「130万円の壁」の対応
パート・アルバイトで働く方が、繁忙期に労働時間を延ばすことにより、収入が一時
的に上がったとしても、事業主がその旨を証明することで、引き続き被扶養者認定が
可能となります。

■ 4. 今月のおすすめ3冊

このコーナーでは、山崎が最近読んだ書籍の中から、皆様にも目を通していただ
ければ、と感じるものを3冊選んで掲載いたします。
ネット上に多くのレビューがありますので、解説は最小限にとどめます。
また、最近の出版物だけではありませんが、ご了承ください。

1『日本企業はなぜ強みを捨てるのか』 岩尾俊兵著 光文社新書

著者は、平成元年生まれの新進気鋭の経営学者です。副題に「カネよりヒト」だ、
と記されていますように、いつしか金に走り、アメリカの手法を表面的にマネし
ただけの日本の経営に対して警告を発し、原点回帰の道筋を示しています。

2『日本の歪み』養老孟司 茂木健一郎 東浩紀 著 講談社現代新書

『バカの壁』の著書で知られる解剖学者の養老孟司、脳科学者の茂木健一郎、作
家の東浩紀の3人が、日本社会の「居心地の悪さ」の原因についてメスを入れ、
深い議論をしています。専門分野が異なる三者三様の視点が興味深く感じます。

3『言語の本質』今井むつみ 秋田喜美 著 中公新書

言語心理学の専門家である二人の学者が「オノマトペ」(いわゆる擬音語、擬態
語)を軸に、言語の奥深さを提示しています。たしかに、言語の本質を考えるこ
とは、人間とは何か? AIとの違いは何か? を追求することにつながります。

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いーかわらばん
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