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いーかわらばん vol.481

  • いーかわらばん
  • 株式会社アウトオフィス
  • 2023/10/10
  • vol.481

▼INDEX▼

■ 1. 時の話題

「ティール組織」は「ユートピア(理想郷)」なのか?

■ 2. 山崎発「新天動説」時代の経営戦略(6)

戦略の成否を決める二つの機能・・・「触媒機能」と「監視推進機能」

■ 3. みんなの疑問!?(18)

「くるみん」は、浸透していますか?  

■ 1. 時の話題

<「ティール組織」は「ユートピア(理想郷)」なのか?>

「ティール組織」ということばを最近頻繁に見聞きするようになりました。世界で
ベストセラーとなったフレデリック・ラルー著『Reinventing Organizations』(2014)
において紹介された組織モデルです。日本では『ティール組織』(英知出版)とい
う翻訳版が2018年に出版されています。

最近、コロナ禍でリモートワークやジョブ型雇用など新しい働き方が模索されてい
る中で、この組織モデルは従来とは大きく異なった視点に基づいており、自社の組
織を見直すうえで参考になる点がかなり多いと思われます。

ラルーは、組織モデルを、その進化のプロセスに従い、5つに色分けしています。
ポイントのみ簡単に紹介しましょう。

第一は、最も原始的なレッド組織。圧倒的な支配者のもとでの組織です。

第二は、アンバー(琥珀色)組織。いわゆる明確なピラミッド型組織です。軍隊的
な組織とも言われます。

第三は、オレンジ組織。ピラミッド的な階層はあるものの、組織の成果(目的)を
求めて、効率的・効果的に運営される、現代企業においては最もポピュラーな組織
です。

第四は、グリーン組織。オレンジが組織の目的を重視するのに対して、メンバーの
一人ひとりが主体性を持って意思決定し、行動する組織です。したがって、リーダ
ーはメンバーがより働きやすい環境を整備する役割を担います。

そして最後がティール(青緑色)組織。これはメンバーが対等かつフラットな組織
です。組織はメンバー全員のものであり、個々人が必要に応じて意思決定を行いま
す。組織の売上目標も予算もありません。原則として固定的なリーダーは存在しま
せんが、目的や能力によって流動的に決まることはあります。イノベーションを生
み出す可能性が最も高い組織だと言われています。

ここまで記しますと、一人ひとりが相当のレベルに達していないとティール組織は
成り立たないように感じます。この組織が「ユートピア」だと言われるゆえんです。

事実、ラルーは、
1 存在目的
2 全体性、多様性
3 セルフマネジメント
という三つの要素が高度に満たされることがこの組織の実現には必要だと記してい
ます。

では、ティール組織はほんとうに「ユートピア」なのでしょうか。この「ユートピ
ア」という表現にも二つのタイプがあるように思います。一つは「そんなの、夢物
語だよ」という「実現不能型」。もう一つは「これこそ最高の組織だ」と称賛する
「過度期待型」。

前者については、決して実現不能ではなく、すでに成果を生み出している会社の例
がいくつも出てきています。また、この「いーかわらばん」の「今月のおすすめ3
冊」で取り上げたサイボウズ(vol.464)や青山学院大学陸上競技部(vol.465)、
あるいは「時の話題」で取り上げたDAOー自律分散型組織ー(vol.476)は、ティ
ール組織にかなり近づきつつあると考えられることから、夢物語とは言えません。

一方、後者の過度期待型に対しては、この組織が常に最高のものであるかどうかは
意見の分かれるところです。先ほど述べた青山学院大学陸上競技部の監督、原晋氏
が指摘しているように、その時々の組織の目的や構成員のレベルに応じて、最も適
した組織があるように思います。新規開発部門のみティール組織で運営するのもあ
り得るでしょう。

「組織は戦略に従う」は、有名な経営学者、チャンドラーが示した命題です。一方
で、もう一人の偉大な経営学者であるアンゾフは、「戦略は組織に従う」という、
まったく正反対の命題を提示しました。それぞれに深い意味があり、絶対的な正解
はありません。先が見えないVUCA時代であるからこそ、何を「理想郷」とするか、
経営者の「考え方」が問われています。

■ 2. 山崎発「新天動説」時代の経営戦略(6)

<戦略の成否を決める二つの機能・・・「触媒機能」と「監視推進機能」>

前回まで、「新天動説」時代の経営戦略において、「深く考える」ことの重要性と、
その際に、一人ひとりが確認すべき以下の4つの重要なポイントについて、順次お
話をしてきました。
1 「動く」との関係・・・「深い思考」と「動く」はいかなる関係にあるのか?
2 「深く考える」項目・・・いかなる場合にも考えるべき不可欠な項目は何か?
3 「深く考える」視点・・・いかなる視点、観点から考えなければならないか?
4 「深く考える」主体・・・誰が深く考え、誰が実践しなければならないか?

今回は最後の4つ目、
4 「深く考える」主体・・・誰が深く考え、誰が実践しなければならないか?
について整理しましょう。

今回の「時の話題」の末尾でも触れていますように、経営という領域では絶対的な
正解はありません。ただ、この四つ目の主体については、正解に近い原理、原則が
あります。

それは、
1)誰が深く考えるのか →   トップ(陣)は欠かせない
2)誰が実践するのか  →   組織の全員
という点です。

1)についてですが、戦略は、会社の将来をどうしたいのか、どうあるべきかを決
定するものです。それについて深く考える強い意欲と姿勢がないのであれば、もは
やにトップ(陣)とは言えません。

次に、2)についてですが、戦略を実践するのが上位の一部の人だけでは意味があ
りません。最前線の顧客接点や製造現場にいる人たちが、真剣に実践しないのであ
れば、戦略は単なる「飾り物」「机上の空論」になってしまいます。

ここから当然の疑問が生じてきます。それは、
組織の全員が戦略について実践するのであれば、全員が「深く考える」必要がある
のではないか? 深く考えることなしに戦略を実践できるのだろうか?
という疑問です。

深く考えなくても、言われたことをただ実行してそれなりの成果を上げる人もいる
かもしれません。しかし、それでは現場の臨機応変な対応は望めないでしょうし、
一人ひとりの成長スピードも遅いものとなるでしょう。

結局、戦略を真に実現するためには、それぞれの立場と役割に基づいて、全員が深
く考え、全員が実践しなければならないことになります。

では、それは本当に可能なのでしょうか。

実は、多くの会社を見てきて、それを可能にするために二つの機能が必要不可欠で
あることを私は実感しています。

一つ目の機能は、ミドルが果たすべき次の二つです。

1 トップ(陣)の考える戦略の本質を噛み砕いて、一般社員に「自分ごと」とし
  て納得するまで「深く考える」機会を与えること(=納得性)
2 一般社員が、その戦略を、自分のキャリア目標と「マッチング」することがで
  きるように「深く考える」機会を与えること(=マッチング性)

これは極めて重要で大変な役割です。ミドルの人たち自身が納得して、自分の人生
とマッチングさせていないとできないことであり、この役割を認識し、実践できる
ミドルがどれだけの割合で存在するか、それが戦略の成否を決定します。

ミドルのこの役割を、私は「触媒機能」と名付けています。もちろん、ミドルの触
媒機能のレベルや実践割合は、さらにその上司であるトップ(陣)がいかなる姿勢
でミドルと接しているかにかかっています。

二つ目は、「監視推進機能」です。

「深い思考」と「動く」はいかなる関係にあるのか? についてお話しした際に、
 1 「深く考えて」「動き」「また深く考える」ことを「仕組み化」する
 2 仕組み化したことが実践できているかを「見える化」する
 3 末端まで実践、浸透させて組織全体を「底上げ化」する
ことの大切さを強調しました。

この「仕組み化」「見える化」「底上げ化」が確実に進んでいるかどうかを客観的
に監視する機能の有無やレベルも、戦略の成否を決定します。戦略が壁にぶつかる
こと、遅れや中だるみが生じることは頻繁に生じます。それをいち早く把握し、し
かるべく報告し、軌道修正を促す機能が大事なことは言うまでもないでしょう。

では、この機能を実践するのは誰でしょうか。

さすがにミドルでは荷が重すぎます。これこそ、「次世代トップ(陣)」の役割だ
と言えるでしょう。

ミドルの「触媒機能」と、次世代トップ(陣)の「監視推進機能」、この二つが経
営戦略を実りあるものするための要諦であること、さらにその根底に現在のトップ
(陣)の姿勢があることを、ぜひこの機会に肝に銘じていただきたいと思います。

今回の
4 「深く考える」主体・・・誰が深く考え、誰が実践しなければならないか?
をもって、「深く考える」シリーズはひとまず終了とします。

次回以降は、「新天動説」時代の経営戦略の具体的な内容について、お話を進める
ことにいたしましょう。

■ 3. みんなの疑問!?(18)

<「くるみん」は、浸透していますか?  >

「くるみん」は認定制度の中でも、一番浸透している言葉ではないかと思います。

「次世代育成支援対策推進法」において、常時雇用する労働者が101人以上の
企業は、労働者の仕事と子育てに関する「一般事業主行動計画」の策定・届出、
外部への公表、労働者への周知を行うことが義務となっていますので、中小企業
の間でも、かなりポピュラーになっていると思います。

ただし、令和4年4月1日から認定制度が改正されていますので、この機会に改正
のポイントをご説明しましょう。

大きな改正としては、くるみんとプラチナくるみんの認定基準が引き上がりました。

◆「くるみん」(令和4年4月1日施行)
①男性の育児休業等の取得に関する基準
男性の育児休業等取得率 7%以上 → 10%以上
男性の育児休業等・育児目的休暇取得率 15%以上 → 20%以上

②認定基準に追加
男女の育児休業等取得率等を厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表

③くるみんマークが改正

◆「プラチナくるみん」(令和4年4月1日施行)

①男性の育児休業等の取得に関する基準
男性の育児休業等取得率 13%以上 → 30%以上
男性の育児休業等・育児目的休暇取得率 30%以上 → 50%以上

②女性の継続就業に関する基準
出産した女性労働者及び出産予定だったが退職した女性労働者のうち、
子の1歳時点在職者割合 55%以上 → 70%以上

◆「トライくるみん」
新たに創設されました。認定基準は、改正前のくるみんと同じです

◆「プラス」
新たに不妊治療と仕事との両立に関する認定制度「プラス」が創設されました。

これは、「くるみん」「プラチナくるみん」の認定を受けたうえで「プラス」
される認定制度となっています。


■ 4. 今月のおすすめ3冊

このコーナーでは、山崎が最近読んだ書籍の中から、皆様にも目を通していただ
ければ、と感じるものを3冊選んで掲載いたします。
ネット上に多くのレビューがありますので、解説は最小限にとどめます。
また、最近の出版物だけではありませんが、ご了承ください。

1『タテの想像力とヨコの想像力』 池上彰著 講談社+α新書
ご存知ジャーナリストの池上氏の著書です。第2章「ヨコの想像力」が仕事や人生
を変える、第3章「タテの想像力」で未来が変わると今が変わる、とあり、AIに負
けないためには「なりたい自分」を持つことがスタートだと説いています。

2『「超」創造法』 野口悠紀雄著 幻冬舎新書
「超」整理法、「超」勉強法など数々の「超」シリーズを世に送ってきた経済学
者の野口氏の著書です。現時点では人間にしかできない創造や企画の活動に、生
成AIをいかに活用すべきか、具体的な手法が説明されていて大変参考になります。

3『新規事業着工力を高める』 内田有希昌著 東洋経済新報社
「新規事業の成功数=適切に始める新規事業数✖️成功確率」という算式において、
特に最初の新規事業の「着工ステージ」の減少が問題だとしています。最初の「新
規事業とは何か」も大変参考になり、新規事業を成功に導く教科書的な良書です。

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