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いーかわらばん vol.473

  • いーかわらばん
  • 株式会社アウトオフィス
  • 2022/11/30
  • vol.473

▼INDEX▼

■ 1. 時の話題

「経営者保証」に一定の制限!

■ 2. 山崎発「新天動説」への幕開け(10)

「芸術学」「哲学」、そして「未来学」

■ 3. みんなの疑問!?(10)

来年から1カ月60時間を超える残業に対して割増率50%以上とされていますが、他の方法はないですか?

■ 1. 時の話題

<「経営者保証」に一定の制限!>

金融庁は、11月1日に、金融機関に向けた監督指針等の改正案を公表しました。
この改正案で注目されるのは、「経営者保証」に一定の制限がなされたことです。

中小企業が金融機関から融資を受ける際は、経営者個人が連帯保証人になること
が当然のように行われています。実際、無保証融資は全体の30%程度にとどまっ
ていると言われています。

今回、この経営者保証に歯止めがかかりました。その内容を理解するためには、
2013年に全国銀行協会と日本商工会議所により整理された「経営者保証に関する
ガイドライン」を確認する必要があります。このガイドラインでは、個人保証を
せずに融資を受けるために必要な、次の三つの要件を示しています。

1 資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に区分・分離
  されている 
2 財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能である 
3 金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている

そして、内部または外部からのガバナンス強化により、これらの3要件を将来に
亘って充足する体制が整備されていることが必要、と記載されています。

今回の改正は、これらの要件を裏側から規定しています。すなわち、金融機関が
経営者に対して個人保証を求める際には、下記の二点について説明をした旨を
確認し、その結果等を書面等に記録しなければならないこととなったのです。

1 どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか、個別具体の内容
2 どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか、個別具体
の内容 
ここで個別具体の内容とは、可能な限り、資産・収益力については定量的、その
他の要素については客観的・具体的な目線を示すことが望ましい、としています。

決して、金融機関が経営者から個人保証を取ること自体が禁止されたわけではな
いことがわかります。個人保証を取るならば、ガイドラインを踏まえたきちんと
した根拠が必要になる、という意味で、制限がかかったことになるわけです。

確かに、起業や事業承継において、個人保証がネックになることが大きいことを
考えると、今回の改正案は一定の効果があると思われます。しかし、一方で、個
人保証に一定の制限が加わることで、融資そのものが受けにくくなるのはないか、
といった声も聞かれます。

今回の改正案は2023年4月からスタートする予定ですが、「物価高克服・経済再
生実現のための総合経済対策」(10月28日閣議決定)の一環であることを考える
と、企業にとってぜひプラスに働いてほしいものです。

■ 2. 山崎発「新天動説」への幕開け(10)

<「芸術学」「哲学」、そして「未来学」>

前回は、バックキャスト人材の集積は、「人を第一に考える経営」、特に「一人ひ
とり」の「観」「志」「A〜D」を考えることと密接にリンクしていることをお話し
しました。

今回は、少し寄り道をして、バックキャスト人材を側面から眺めてみたいと思いま
す。私のちょっとした思い出話から始めましょう。

私が大学院でマーケティング論の研究をしていた40年くらい前に、あるドイツ人の
大学院留学生のF君と知り合いました。彼は教育学専攻でしたので、日本の教育に
ついて多くの話をしました。

F君が日本の学生や若い社会人と議論していて強く感じることは、
「で、行き着くところ、君自身の考えはどうなの?」
「だから結局、君は将来、どうしたいと思うの?」
といった問いに対して、明確な答えが返ってくることが少ない、という点でした。

その原因について、F君は次のように語っていました。

「中等教育でアート、フィロソフィー、フューチャオロジーという学問の基本を
じっくりと学習する機会がないからだと思う。このことは、20年、30年先の日本
にとって、致命的な弱点になるかもしれない・・・。」

彼は、この三つー芸術学、哲学、未来学ーを、広義の価値観と使命感を醸成する
基本の学問に位置づけていました。もちろん、特定の何かを押し付けるのではな
く、一人ひとりが成長に応じた自分なりの価値観や使命感を持つことの大事さを、
可能な限り人生の早い段階で体得すべきだというのです。

さらにF君と議論を繰り返すことで、これらは「体得」という言葉が示しているよ
うに、後天的な教育や訓練、すなわち他人の話を聞き、自分の考えを述べ、深く
考え、行動することの繰り返しで、自身の価値観や使命感を実践する能力が身につ
いていくものだ、ということがわかってきました。F君は自分の研究の中でこのこ
とを実証しようとしていたようです。

アートとフィロソフィーはともかく、私はその時初めてフューチャオロジー(未
来学)というものがあることを知りました。日本国語大辞典には、「未来をさま
ざまな角度から研究、推論する学問の総称」と記載されています。未来学の手法
には、シナリオプランニング、デルファイ法、モデリング、傾向分析などに加え
て、最も重要なものにバックキャスティングがあります。

また、未来学の著名な実践者としては、『第三の波』の著者アルビン・トフラー、
『脱工業社会の到来』のダニエル・ベル、『日本未来論』のハーマン・カーン、
『ポスト資本主義社会』のピーター・ドラッカー、『不確実性の時代』のガル
ブレイスなどを挙げることができるでしょう。

40年を経過した今、研修やその他の場で、F君が発していた、日本の致命的な弱点
になるかもしれない、という「警告」を実感します。

と同時に、広義の価値観や使命感の実現に関して真剣に考え、議論し、行動する
といった場や経験を、若い段階から多く持って過ごしてきている人ほど、バックキ
ャスト発想が身についていることがわかります。

結局、前回お話しした「観」「志」「A〜D」を深める「場」と「経験」の積み重
ねがバックキャスト人材の集積を生み出す、という同様の中身に行き着いてしまい
ます。

次回はいくつかの具体的な事例を挙げて、総括としたいと思います。

■ 3. みんなの疑問!?(10)

<来年から1カ月60時間を超える残業に対して割増率50%以上とされていますが、他の方法はないですか?>

1つだけ、検討の余地があります!

先ずは、来年4月から中小企業でも適用される法改正についてご説明します。
今までは、残業時間についての割増率は25%以上でした。
それが以下に変わります。

① 1カ月60時間まで・・・・・・・・・25%以上
② 1カ月60時間超部分・・・・・・・・50%以上
③ 1カ月60時間超部分の深夜残業・・・75%以上

検討の余地がある方法とは「代替休暇制度導入」です。
 
月60時間を超える残業を行った労働者の健康を確保するため引き上げ分の
割増賃金の支払の代わりに有給の代替休暇を、付与することができます。
つまり、代替できる部分は、60時間を超えた追加の25%部分のみです。
代替休暇を適用した場合には、60時間を超えた部分については、通常の残業
にかかる割増率の25%以上と同じ率になります。

代替休暇を採用する場合、割増賃金を休暇に換算するための計算式が下記と
なっています。

(1ヵ月の法定時間外労働の時間数-60時間)×換算率(※)

(※)月60時間を超える割増賃金率(50%以上)
         -代替休暇を取得した場合の割増賃金率(25%以上)

例えば、月80時間残業(深夜・休日残業なし)をしたとします。
就業規則で定めた割増率は、労働基準法の最低ラインを適用するとします。

(80時間―60時間)×25%(※)=5時間
(※)50%―25%=25%

会社は5時間の代替休暇を与えることになります。

この場合、80時間分の割増賃金(割増率25%)の支給と
5時間の代替休暇の付与、ということになります。

代替休暇制度の導入にあたっては労働者の過半数で組織する労働組合もしくは
労働者の過半数を代表する者との間で労使協定を締結することが必要です。

どちらにしても、会社はいかに仕事を効率化し、残業を抑えられるかの施策を
考える必要があります。

■ 4. 今月のおすすめ3冊

このコーナーでは、山崎が最近読んだ書籍の中から、皆様にも目を通していただけ
れば、と感じるものを3冊選んで掲載いたします。
ネット上に多くのレビューがありますので、解説は最小限にとどめます。
また、最近の出版物だけではありませんが、ご了承ください。

1『 世界インフレの謎』 渡辺努著 講談社現代新書  
世界的なインフレの原因は、ウクライナ戦争ではない、またパンデミックは大きな
要素ではあるが、むしろそこから生まれた行動変容、特に「同期」行動である、と
いう見解は、大変興味深く参考になります。

2『誰が国家を殺すのか』 塩野七生著 文春新書
『ローマ人の物語』の塩野七生氏が、2017以降に『文藝春秋』に掲載した随筆をまと
めたものです。表紙に記載されている「民主政は、民主主義を自認する人によって壊
される」など、ローマの歴史を参考に、今の日本社会を考えるヒントが満載です。

3『異能の掛け算』 井上一鷹著 ニューズピックスパブリッシング
新規事業開発における、0→1、1→10、10→100のフェーズの根本的な違い
とその方法論、またそれぞれのフェーズに必要な3種類の人材の組合せによるチーム
づくりなど、開発の成功確率を高めるための視点が論理的に整理されています。

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いーかわらばん
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