いーかわらばん vol.428
- いーかわらばん
- 株式会社アウトオフィス
- 2011/02/17
- vol.428
▼INDEX▼
■ 1. 時の話題
「地域別」「セグメント別」のグローバル化
■ 2. 山崎発、経営を考える
効用的修羅場の買いつけ(その94)・・・「薫陶」と「体得」
■ 3. 今月の本棚
『経営の精神』 加護野忠男著 生産性出版
■ 1. 時の話題
<「地域別」「セグメント別」のグローバル化>
最近、アジアシフトが「地域別営業利益」というデータで説明されることが
多くなりました。もし時間があれば、「地域別営業利益」を、YahooかGoogleで
検索してみてください。
つい20年前までは、「首都圏、近畿圏、中京圏では・・・」などと誰もが考えて
いたのですが、今や、「米州、アジアパシフィック、EU、・・・」などという言葉が
続々と出てきます。
有価証券報告書をはじめとして、さまざまな投資家へ向けての冊子のなかにも、
地域別業績あるいは所在地別利益などと称した世界数値の情報公開は当たり前
になっています。
面白いのは、ここ5、6年マスコミに報道されている大手の会社はもちろん、
それ以外の中小企業においても、新年度方針や経営戦略指針の背景に、
「世界地域」と「セグメント(業種)」のマトリックスが明確に存在することがわかる、
という点です。
たとえば、ある基礎素材メーカーを例にとれば・・・
縦軸に、住宅機器、医療機器、自動車機器、エレクトロニクス関連、といった
セグメントがあります。
一方横軸には、東日本、西日本、北米、欧州、華東、華南、その他アジア、と
いった地域が記入されています。
そして、それぞれのマスには、実績と予算を売上及び利益で記入する、という
ものです。当然、実績空白地域をどうするか、地域別シェアをいかに拡大するか
が戦略の中身です。
この「いーかわらばん」の「山崎発、経営を考える」では、
「宇宙の目」=「空間的位置眼」
の説明に入りつつあるところだと思いますが、まさにその視点が問われている
典型例と言えるのではないでしょうか。
■ 2. 山崎発、経営を考える
<効用的修羅場の買いつけ(その94)・・・「薫陶」と「体得」>
前回は、
経営者や後継者が付き合う人の年代
についてのお話でしたが、その前提として、老後のライフプラン策定のご依頼を
いただいたお話をしました。
繰り返しになりますが、そこでは、
・第Ⅰ期 0~15歳 準備期
・第Ⅱ期 15~40歳 成長期
・第Ⅲ期 40~65歳 成熟期
・第Ⅳ期 65~80歳 総括期
と人生を分けました。
そして、これをマラソンにたとえて、40歳が折り返し、成長期は前の先輩を追い
かけて走り、成熟期は後ろから追いかけて来てすれ違う後輩を意識して走る、
と述べました。
それではこのお話しと、「経営者や後継者の付き合う年代」とはどのようにリンク
するのでしょうか。
前回は、成長期と成熟期の50年間に、どれだけ先輩や後輩との「時間的、
空間的接点」を持っているかどうかが、その後の人生の幅や深さを決定する、
ということでお話は終わっていたのですが、それでは、その接点を持つことの
ポイントはどこにあるのでしょうか。
さきほどのご依頼の中心は、もちろん老後のライフプラン策定でした。しかし、
サブテーマとして、「ライフプラン策定の重要性を後輩に伝える」、さらに言えば
「さまざまな方面での承継」というものがありました。それで、20年前に「事業
承継」のご指導を数多くさせていただいていた30歳代半ばの私に白羽の矢が
立ったのです。
私はその人生マラソンにおける40歳の折り返し前の先輩の背中を追いかけて
走るときの得るべきポイントを、「薫陶」と「体得」というキーワードに集約しました。
もともと「薫陶」とは、「陶」の文字からもわかるように、陶芸から来た言葉です。
お香をたいて土をこね、その薫りを土にしみ込ませつつ形を整えて器を作る、
ということから、すぐれた人格を持って人を感化し、教育すること、といった意味を
持つと言われています。
しかし、折り返し前を走っている人に対して、先輩面して頭ごなしに薫陶教育した
ところで意味がないだろう、むしろ、後輩が自主的に先輩たちの走ってきた道の
薫りを感じ取り、自らの工夫を加えて走ってみること、そこに「背中を追いかけて
走る」本質がある、と考えたのです。
それを集約したのが「薫陶」と「体得」というキーワードです。
そして、折り返しを過ぎた先輩たちは、恩着せがましく薫陶を垂れるのではなくて、
① 先輩から「薫陶」を嗅ぎ取り、それを自ら「体得」していく主体性の大事さを
後輩に伝えること
② 後輩に感じ取り体得してもらうためのより薫り高いものをさらに作りあげて
いくこと
③ 逆に、謙虚に、後輩から「薫陶」を嗅ぎ取り、「体得」を試みること
がその役割であり、「すれ違う後輩を意識して走る」ことの本質だとしました。
この過程で、組合員の人たちが言っていた次の言葉が今でも結構印象に残って
います。
「背中を見て覚えよ」という言葉は、かなり核心を突いているんですね。
経営者や後継者が、年代の違う人たちと接することのほんとうの大事さは、
集約すれば、この「薫陶」と「体得」である、と今でも私は確信しています。自分と
同じ世代の人からだけでは得られない世界を、年の離れた先輩や後輩から感じ
取って自分のものにしていくことこそが人生の幅を広げ、深めることになるのです。
どの年代の人たちと積極的に付き合おうとしているか、それがその経営者の
レベルを決める一つの要素です。
■ 3. 今月の本棚
<『経営の精神』 加護野忠男著 生産性出版>
ご存知のとおり、加護野氏は神戸大学経営学大学院教授で、日本を代表する
経営学者です。これまでにも、日本的経営のよさをさまざまな場面で強調して
きましたが、この本にも、一貫してその主張が見られます。
第1章 企業の存在意義を考える
第2章 三つの経営精神
第3章 経営精神の実践
第4章 経営精神の劣化
第5章 経営精神の復興
という構成になっています。
まず第2章で、経営精神を、①市民精神、②企業精神、③営利精神の三つ
から成り立っているとし、日本の経営精神が劣化した重要な理由の一つは
この三つの精神のバランスが崩れてしまったことにある、としています。
特にアメリカ式経営を取り入れたことは大きな問題であると指摘しています。
グローバルスタンダードを取り入れなければ世界から取り残されるのでは
ないかと考えることが、日本独自の能力と文化を失わせ、内部統制の
ルール作りが組織の内部にあるよき慣行を破壊し、また四半期決算の制度が
長期を見据えた投資や人材育成を阻害していると強調しています。
つい最近も新聞紙上をにぎわせたCCC(カルチャーコンビニセンスクラブ)や
アートコーポレーションのMBOによる非上場化を目指す記事をみても、その
大きな理由の一つに「長期的視点の復興」を掲げています。
短期と長期のバランスこそが経営者の腕の見せどころ、とはよく言われますが、
自分たちの強さの源泉を再度認識するためには一読の価値があるでしょう。
■ 4. おしらせ
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次回のテーマは以下の通りです。
- 1. 時の話題
- 2. 山崎発、経営を考える
- 3. 事業承継の真視点
- 4. おしらせ
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