いーかわらばん vol.354
- いーかわらばん
- 株式会社アウトオフィス
- 2009/01/22
- vol.354
▼INDEX▼
■ 1. 時の話題
自動車向け電池事業を、インテルが開始?
■ 2. 山崎発、経営を考える
効用的修羅場の買いつけ(その22)・・・「体験視野マトリックス」
■ 3. 事業承継の真視点
持株会社について(その6)・・・ 持株会社の二大機能
■ 1. 時の話題
<自動車向け電池事業を、インテルが開始?>
インテルと言えば、世界最大のMPU(超小型演算処理装置)の製造メーカーです。
そのインテルの次なる戦略が、なんと電気自動車に搭載するリチウムイオン電池
の製造かもしれない、という情報が飛び交っています。
これは、同社元会長のグローブ氏が提案したといわれています。彼は、電気自動
車が現実化すれば、ノートパソコン向けの100倍もの電池の生産能力が必要に
なるとしています。
しかし、今のアメリカには、ほとんどその生産能力がありません。
日本のパナソニック、三洋、あるいは中国の比亜迪(BYD)などに独占されてしまう
のではないか、という危機感があるのです。
現在のハイブリッド車であるプリウスは、ニッケル水素電池を搭載していますが、
リチウムイオン電池は、その2倍のエネルギー効率を持つといわれています。
それだけに価格も高く、自動車の部品の中では、最も高額の部類に属します。
もっとも、インテルのこの分野周辺への参入は、今回に始まったことではありません。
実は、昨年、太陽電池の生産を行う新会社を設立し、太陽光発電事業に参入する
ことを発表しているのです。
オバマ新大統領のもと、やがて環境問題は、かつてない活況をもたらすことになるで
しょう。インテルほどの大資本が躍起になることによって、アメリカでも、太陽光発電
や太陽電池の開発競争が激化してくることは間違いありません。
日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国のいずれが、この分野の主導権を握り、ディファクト
スタンダードを築き上げるか、今後の成り行きから目を離すことができないでしょう。
■ 2. 山崎発、経営を考える
<効用的修羅場の買いつけ(その22)・・・「体験視野マトリックス」>
前回は、「一流人材への成長連鎖のしくみ」の二つ目に入るために、なぜ、トップと
トップ陣とのギャップがきわめて大きいのか、という理由の第一について考えてみ
ました。
要約すれば、
・一流に接する機会をトップ以外に思い切り推進すること
・そこから得る効果度で、その人間の“一流度”を評価すること
・その「眼(風土)」を組織全体に植えつけること
ということでした。
今回は、ギャップが生じる二つ目の理由、「体験視野」について検討してみましょう。
話は少し横道にそれますが、私は、さまざまな講演で、
「一流人材になるために必要な能力」
という点について、大きく次の三つのものをあげています。
① (強い)向上心
② 知識力
③ 体験力
そして、その中でもっとも重要なものを一つだけ挙げろ、と言われたら、躊躇なく、
「体験力」と答えます。体験力とはいかなるものか、向上心や知識力とどう違うのか、
といったことは、もう少し後でゆっくりお話をしますが、ここでは、その項目のみを
あげて、イメージしておきましょう。
① 他人(消費者、顧客、世の中・・・)が何を求めているかを察知する能力
② 何をすべきかを決定し、構築する能力
③ 差別化、独自性、他と異なることへの執着心
④ 「具体⇔抽象の往復」能力
⑤ 自分、自社を客観的に見る能力
⑥ やりきる能力
⑦ 人をひきつけ導く能力(リーダーシップ) 等々
さて、これらの体験力により築かれる土台は、この前の「修羅場の効用」シリーズ
でお話をした「器」と「肚」です。
そしてもうひとつ、こういった体験力そのものを養い、維持するための「こやし」が
必要です。それが、私が「体験視野」あるいは「体験世界」と常々申し上げている
ものです。
「体験世界」とか言うと、「何か怪しい霊の世界?」とか思われそうなので、努めて
「体験視野」ということばを使っているのですが、この「世界」という言葉には、二つ
の要素があります。
一つは、文字通りの「地理的な世界」という意味です。もう一つは、たとえば「華道の
世界では・・・」といった時に使う「分野」とか「領域」という意味です。
さて、この二つの「世界」のうちの地理的なものを縦軸に書きます。世界の国名を
書き入れていくのがスタートです。自分の行きたい国、知っている国など世界の50
カ国ぐらいを入れてみるといいでしょう。
横軸には、分野、領域を記入します。考えられるものをある程度入れます。どこまで
細かくするかはあまり気にしないで、画家、美術館、建築、茶華道、陶芸、劇団、
ゴルフ、テニス、サッカー、野球、レストラン、名産品、歌手、コンサート、劇団、車、
鉄道、山、公園、寺社、小説家、など、思いつくまま50項目ぐらい入れてみます。
そうすると、縦軸に50の国、横軸に50の分野が記入された250セルの表ができ
あがります。
ここで、そのセルにまったく知らないものは空白、少しかじったものは○、かなり
知っているものは◎、さらに詳しくプロ的になれば、だんだんその丸が塗りつぶさ
れていって●になる、という印を記入します。
この結果できあったものを、私は「体験視野マトリックス」と呼んでいます。これは、
どこまでいってもツールですが、私自身はもちろん、何人かの経営者や後継者に、
このマトリックスをつくってもらって、非常におもしろいものを感じます。
次回このお話を続けながら、「体験視野」の重要性について、さらに深めていきま
しょう。
■ 3. 事業承継の真視点
<持株会社について(その6)・・・ 持株会社の二大機能>
前回は、持株会社の方式と、合併との違いについて、考えました。
今回は、所有と経営の分離という基本的な視点で、持株会社を整理し、
次回以降の持株会社の創設に入る準備としておきましょう。
持株会社の大きな目的の一つが、所有と経営の分離という視点にあることは
すでにお話をしました。もちろん、オーナー経営、同族中小会社においては、
その必要はない、と主張もあります。
それはそれでもっともですし、最終的にはどのような会社にしたいかという価値観
の問題です。しかし、一方で、その企業を発展させていこうと思ったときに、やはり
「経営者」の質と量が問題になっていくわけで、それを一族だけで賄えるケースは
少ないといってよいでしょう。
経営者の質と量を真剣に考えるならば、結果として、所有と経営の分離がそれ
なりに進むことは必然です。また、オーナー家の内紛を避ける意味でも、「経営
に携わる」機能と「所有」機能とは、できるだけ分離しておくべきだと思います。
さて、このような趣旨のもとに持株会社を設立する際のスタートは、事業の分類と
分離です。
ここで大切なことは、せっかくの機会ですから、自社の事業をそのコンセプトまで
含めて、徹底的に検証することです。この検証をいかにするかは別の機会に譲り
ますが、中長期的に考えた自社の戦略を練ることとある意味で重なります。
事業の分離を経て、持株会社が第一次的に完成します。持株会社の傘下に、
いくつかの事業会社がぶら下がる構図ができあがるわけです。中小のオーナー
企業が、相続対策等を目的として行う場合は、その目的をかなり達成することに
なるでしょう。これを仮に、「所有持株会社」と名付けておきます。
しかし、中小から中堅、さらに大企業へと進化する過程で、もうワンランク上の
レベルで、所有と経営を分離しておこうと思うならば、「所有持株会社」と事業
会社との間に、もうひとつ持株会社をつくることが必要ですし、また実際よく行わ
れます。
これは、各事業会社を経営統合し、本来の意味でのグループ「経営」を実践する
会社で、持株会社と言いながら、その本質は「所有」ではなくて「経営」です。
したがって、
オーナー一族の株主
↓
所有持株会社(資産統括会社)
↓
経営持株会社(経営統括会社)
↓
各種事業会社
という組織になるわけです。
いかなる組織にするかは、価値観、目的、発展段階によって変わるでしょうし、
企業のステージが変化した場合の組み替えも、そう難しくはありません。
言い換えれば、持株会社には、資産統括という要素と、経営統括という要素の
二つが存在し、それを分離するか、統合するかは、処々の事情から判断すること
になるのです。
次回からは、今回のこの組織を念頭に、実際の持株会社の設立について整理
していきましょう。
■ 4. おしらせ
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次回のテーマは以下の通りです。
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