いーかわらばん vol.353
- いーかわらばん
- 株式会社アウトオフィス
- 2009/01/15
- vol.353
▼INDEX▼
■ 1. 時の話題
電波の乱れを探知して・・・
■ 2. 山崎発、経営を考える
効用的修羅場の買いつけ(その21)・・・一流に接する機会の開放
■ 3. 今月の本棚
『アダム・スミス』 堂目卓生著 中公新書
■ 1. 時の話題
<電波の乱れを探知して・・・>
2011年には、アナログ放送がなくなって、原則として地上デジタル放送のみに
なることは、皆さん、よくご存じのことと思います。
われわれの身の回りには、このデジタル放送の地上波をはじめ、無線LANの
電波など、さまざまな電波が飛び交っています。
そして、これらの電波は、家の中で、壁や天井にぶつかっているわけですが、
その電波の通り道に、何か障害物があると、当然ながら、その電波の伝わり
方に変化が生じます。
この電波の性質を利用すれば、たとえば、窓やドアを開けたり、人が侵入した
場合に、その変化を察知して、防犯をはじめ、さまざまな活用ができるのでは
ないか、という研究が進んでいます。
具体的には、受信機をいくつか並べたアンテナ状の装置を置いて、無線LAN
などの電波の変化を探知する、という技術が開発されつつあります。現在の
防犯カメラや振動センサーよりも、はるかに活用範囲は広いのではないか、と
言われています。
たとえば、これを自動車の中に取り付けると、窓をのぞいただけで、反応します。
普段ないところにある不審物の発見にも役立ちます。
もちろんこういった犯罪だけでなく、通常は何もないATMの上に、忘れ物をした
場合も、警告することが可能になります。
企業や家庭、移動する車などの乗り物の中でも、無数の電波が飛び交い、
さらに、今後その数量が飛躍的に増していくことを考えると、大きな実用技術に
発展する可能性を秘めていると思われます。
■ 2. 山崎発、経営を考える
<効用的修羅場の買いつけ(その21)・・・一流に接する機会の開放>
ここ数回にわたり、成長を促す風土の条件が、トップの真剣な姿を前提として、
「一流人材への成長連鎖のしくみ」を作ること、そしてその一つ目が、一流の
ものに接することを習慣化させる理念と真のしつこさであること、をお話して
きました。
そして、前回「一流人材への成長連鎖のしくみ」の二つ目に入るために、
一流企業において、なぜ、トップとトップ陣との間のギャップが小さいのか、
逆にいえば、そうでない会社で、なぜそのギャップが大きいのか、という問題
提起をしました。
ギャップが大きい理由は、二つあると私は考えています。その第一の理由を
今回整理してみましょう。
それは、今まで何回も申し上げてきた点ですが、一流に接する頻度と深さの
ギャップです。
たとえば、「トップセールス」という言葉があります。一つには、厳しい状況を
迎えた時に、トップ自らが営業活動の先頭に立って難局を乗り切る、という
姿を現しています。
大事なのは、もう一つの意味です。複数の企業のトップ同士が直接話し合う
ことによって、すばやく営業活動を推進し、必要な手を打ってしまう、という
意味で使います。
勝負のかかった仕掛け時には、強い決断力を持ったトップ同士の“おでまし”が
必要なことは言うまでもありませんし、それこそがトップの役割なのですが、
考えてみると、これが可能であるのは、常日頃から、トップ同士がお互いに
交流を深めているからにほかなりません。
大企業はもちろん、中小・中堅企業においても、多くの経営者セミナーや視察
旅行に参加し、またさまざまな勉強会や業界団体等の会員になっていると思い
ますが、その参加のかなりの部分をトップ自身が独占していることが多いのでは
ないでしょうか。オーナー企業では、その割合はさらに高くなるのが一般的です。
ここに明らかにギャップが生じています。トップが一流に接する機会が10で、
それ以外の人が1であれば、そのギャップは、結果として10対1になるのは
あたりまえです。
もちろん、トップ以外の人が一流の人に接しても、そこから得るものがどれだけ
あるのか、時間と費用のムダではないか、という疑問も生じてきます。「俺だった
ら、もっと貪欲にいろいろな人に働きかけていくのに・・・」と歯がゆく思うトップの
方も多いはずです。
そのとおりです。そこから得る効果が非常に大きいからトップなのです。トップの
ほうが得るものが小さければ、その時点でもうトップではありません。一流に
接して得る効果の大小こそ、感覚的ですが、そのまま評価基準になってもいい
のではないか、と思います。
ですから、プライベートで一流に投資する機会を増やすことをしつこく追求する
ことはもちろん、10ある機会のうちの3割~5割をトップ以外に開放し、ビジネ
ス上においても一流に接する機会を与えた上で、そこから得る効果で、その
人間の“トップ度”を評価してみてほしいのです。
一流企業であればあるほど、トップ以外の人間がさまざまな会合に出席する
割合が高いことは事実です。
もっといえば、
一流に接した時に得る効果度=“トップ度”、“一流度”
といった理念を浸透させながら、その機会を与え、さらにそれを評価する「眼」を
組織全体に醸成していくことこそ、「一流人材への成長連鎖のしくみ」を作る二つ
目のポイントなのです。
要約すれば、
・一流に接する機会をトップ以外に思い切り推進すること
・そこから得る効果度で、その人間の“一流度”を評価すること
・その「眼(風土)」を組織全体に植えつけること
です。
次回は、ギャップが生じる二つ目の理由、「体験視野」について考え、「一流人材
への成長連鎖のしくみ」の三つ目を導き出してみたいと思います。
■ 3. 今月の本棚
<『アダム・スミス』 堂目卓生著 中公新書>
久しぶりに骨のある本をご紹介します。
新書版ではありますが、著者の堂目氏は、大阪大学大学院経済学研究科
教授であり、また、この著書は、第30回サントリー学芸賞(政治・経済部門)を
受賞しています。
アダム・スミスと言えば『国富論』、『国富論』と言えば「神の見えざる手」と社会
科で暗記をし、また経済学のなかの基本として、頭の中にしみついています。
その意味するところは、あらゆる規制を取り除き、人間本来が持つ「利己心」に
基づいた競争を促進していくことによって、高い経済成長が実現していくはずだ、
というように多くの人が理解しています。
そこに、違ったより深い視点を持ち込んだのが、この本の功績だといえるで
しょう。
副題には、
『道徳感情論』と『国富論』の世界
と示されています。
アダム・スミスのもう一つの代表的な著書『道徳感情論』を読み込むことに
よって、われわれが従来、常識的に考えているアダム・スミスの世界とは、
かなりかけ離れた視点が浮かび上がってきます。
たとえば、市場社会における「富」の機能について、単に「利己心」から
ため込んでほくそ笑んでいるものではなく、また、優雅な生活を保障するため
のものでもなく、
人と人とをつなぐ機能
に注目していることが見えてきます。
なぜ、人と人とをつなぐのでしょうか。
富んだ人は自分だけで消費するだけでなく、より富を増やしたいという気持ち
から、さまざまな産業に投資する、そのことによって労働需要が発生し、貧しい
人にも仕事が与えられ、賃金を受取り、それが生活の安定をもたらすとともに、
消費を促進させる・・・
これこそが富んだ人と貧しい人とをつなぎ、真の経済成長を促す、ものだという
考えが見えてくるのです。
麻生総理の定額給付をアダム・スミスが見たらどのような評価を下すでしょうか。
今の日本、世界が直面している経済を異なる角度から考える視点を養うには、
最適な本の一つだと思います。
■ 4. おしらせ
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次回のテーマは以下の通りです。
- 1. 時の話題
- 2. 山崎発、経営を考える
- 3. 事業承継の真視点
- 4. おしらせ
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