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いーかわらばん vol.323

  • いーかわらばん
  • 株式会社アウトオフィス
  • 2008/05/29
  • vol.323

▼INDEX▼

■ 1. 時の話題

サブプライムローンと「付加価値」

■ 2. 山崎発、経営を考える

修羅場の効用(その27)・・・「勘人間」と「詰め人間」のバランス

■ 3. 財務ホット情報

役員分掌変更と退職給与  ~実質的判定が重要~

■ 1. 時の話題

<サブプライムローンと「付加価値」>

サブプライムローン問題は、まだまだとどまるところを知らず、世界中に拡大して
います。

今年4月のIMFの試算によれば、世界中の金融機関の損失額は、9,450億ドル
(約100兆円)に達する見込みとのことです。これは、昨年10月段階の見込み額
2,000億ドルに対し、半年で5倍近くに増えたことになります。この損失額はさらに
拡大する、というのが、大方の予想です。

サブプライムローンは、いまさらここでご説明するまでもなく、プライム層(優良顧客)
向けでない住宅ローン担保証券として証券化されたもので、それらはさらに債務担
保証券というかたちで再証券化されて、投資家に販売されていきました。

そこでは、格付け機関による証券の格付けが行われ、言い換えると、不動産の
ローンによる売買そのものが証券化されて、市場取引の対象になっていたといえる
でしょう。

疑問に感じるのは、最先端の金融工学を駆使して、権威のある格付け機関がそれ
なりの格付けをして、それなりの識者が取引に参加しているにもかかわらず、ほん
の一部の仕掛け人だけが大儲けをし、その裏で社会全体に大きな損失を生み出し
ているという事実です。

「投資にはリスクが付きもの」という次元ではありません。どこかがおかしいのでは
ないでしょうか。

おかしさの一つは、極端な株主価値志向、短期志向です。短期間で株価を上げ、
時価総額を増加させることが、経営者の最大の使命という考えと、この種の問題
とは密接にリンクしています。ストックオプション&自社株買いというしくみも、同様
の発想です。

このことがおかしさの第二である、金融資本主義への極端なシフトを生み出して
います。「カネがカネを生み出すことが最も効率がよい」という風潮がどんどん強く
なって、結果として、長い時間を要する製造技術の開発、レベルアップなどがおろ
そかになっていく傾向です。

そして、三つ目は、上記とあいまって、ネタを探しては証券化し、それを「格付け」
という保証をつけて市場化し、値上がり益を狙う、という手法が信用できるのか、
という点です。

不動産で懲りた面々は、石油をはじめとしたエネルギーや、あらゆる食料を対象
として、証券化を試み、新しい商品を生み出していくと思います。たとえば、最近、
京都議定書、洞爺湖サミットなどとの関連で、よく語られる「排出量」なども証券化
の対象になるものの一つです。

しかし、証券化された金融商品「そのもの」は、トータルで見て付加価値を生みません。
排出量取引も、排出量が移転するだけで、総排出量が減少するわけではありません。
世界に対して、日本の強さをアピールするためには、もう一度、資本主義の原点に
立ち返って、「付加価値」の意味合いを深く考えるべきではないでしょうか。

■ 2. 山崎発、経営を考える

<修羅場の効用(その27)・・・「勘人間」と「詰め人間」のバランス>

前回は、「やりきる能力」=「大局的しつこさ」は、「勘と詰め」の繰り返し、すなわち、
「構図の感性」と「その徹底した検証行為」の繰り返しから導き出されるものである、
という点についてご説明をしました。

さてこの「構図の感性」と「その徹底した検証行為」の両方を高いレベルで確保する
ことが望ましいことは事実です。何回も例に出している将棋はもちろん、他のスポーツ
や、企業もこの両方の力を身につけることの努力は惜しんではならないと思います。

しかし、一人の個人についてみれば、この二つの「強い、弱い」、「得意、苦手」が
あるのもまた事実です。羽生さんのように、両方を最高のレベルで兼ね備えた人は、
そうざらにはいません。

とすれば、組織において経営者が考えるべきことは、「構図の感性」に強い人間と、
「その徹底した検証行為」に強い人間、言い換えれば「勘人間」と「詰め人間」をいか
にバランスよく組み合わせて機能させるか、という点でしょう。

何回も申し上げるように、一人の人間としては、両方のレベルアップを可能な限り
図らなければならないのですが、一人ひとりがレベルアップするためにも、組織に
おいては、バランスが大事なのです。

ちょっと中身は違いますが、あれだけの大砲を揃えた読売巨人軍が常勝軍団に
なりえないのと共通している部分があるかもしれません。「巨人は、ゴルフでアプ
ローチもパットも、すべてのショットをドライバーで打つつもりらしい」と揶揄した人が
いましたが、あたらずとも遠からず、というとファンに叱られるでしょうか。

いずれにせよ、大局観に強い人、詰めに強いしつこい人という視点で、人を見極め、
組織をバランスよく機能させることが必要だということです。こう申し上げると、
「うちみたいな会社では、大局観も持たず、詰めも甘い人間ばかりで・・・」
と言う経営者がおられますが、謙遜ならともかく、ホンネだとしたら問題です。

それらの力を発揮する場、それらの力を醸成する場、をつくりあげていない、
あるいは、そういった人間を見極め、引き寄せる力のない、経営者自身の実力不足
でしょう。

さて、「大局的しつこさ」について最後に申し上げたいことは、「予測能力」との関連です。
言い換えると「将来を見る力」とどのような関連があるか、ですが、この点については、
次回に回すことにします。

■ 3. 財務ホット情報

<役員分掌変更と退職給与  ~実質的判定が重要~>

同族会社では、代表者を退いて、取締役会長として、会社に残るケースがよくみられ
ます。その際に、代表者在任中分の退職給与を支払うのが一般的です。

このように役員が、現実には退職していなくても、分掌変更により役員としての地位や
職務の内容が激変して、実質的に退職したと同様の事情にある場合には、支払われ
た退職給与は、その事業年度において損金の額に算入することができます。
その具体例として、法人税基本通達9-2-23では以下のように例をあげています。

 ①常勤役員が非常勤になったこと
 ②取締役が監査役になったこと
 ③分掌変更の後の役員の給与がおおむね50%以上減少したこと

一部の実務家の間では ①~③を形式的に満たしていてば、退職給与に該当すると
みる考え方もあるようですが、平成18年10月25日の大阪高裁の判例では、通達要件
を形式的に満たしていれば、当然に退職給与として認められるわけでなく、あくまでも
実態をみて判断すべきであるとの考え方が示されました。

また、平成19年の法人税基本通達の改正により、給与のおおむね50%以上の減少の
場合においても「その分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占
めていると認められる者を除く」という括弧書きが挿入されました。
これは従来からの考え方を改めて確認したものと考えられます。

そのほかに、役員退職金が長期にわたって未払いになっている場合や長期間の分割
支払いになっているような場合もまた退職給与として認められないとされています。

以上のように形式的な要件を満たしていても、実態から判断すると退職給与として
損金への算入が認められない場合があるということに留意する必要があります。

■ 4. おしらせ

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次回のテーマは以下の通りです。

  • 1. 時の話題
  • 2. 山崎発、経営を考える
  • 3. 今月の事務
  • 4. おしらせ

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