いーかわらばん vol.306
- いーかわらばん
- 株式会社アウトオフィス
- 2008/01/24
- vol.306
▼INDEX▼
■ 1. 時の話題
「阪神港」誕生の意味
■ 2. 山崎発、経営を考える
修羅場の効用(その10)・・・頭を空っぽ(自由)にして聞いているか?
■ 3. 事業承継の真視点
数種の株式・・・議決権制限株式(その2)
■ 1. 時の話題
<「阪神港」誕生の意味>
「阪神港」という新しい港が、正式に、昨年12月1日に誕生しました。
2007年12月1日施行の港則法施行令の改正によって、港則法上と関税法上、大阪港、
神戸港、尼崎西宮芦屋港の大阪湾3港がひとつに統合されたのです。
これには大きな意味があります。
従来この大阪湾3港に寄港する外国の貿易船の4割、外航コンテナ船では6割を超える
船が、3港のうちの2港以上を使っていました。
それらの船は、それぞれの港で、船舶の重量に応じて課税される「とん税」(国税)や、
「特別とん税」(地方譲与税)を払っていたのですが、それが今回の統合で、阪神港と
して1回の支払ですむことになります。
こういった手続きの簡素化によるスピードアップ、入港関連費用の低減によって、
阪神大震災による打撃とその後の製造業の相次ぐ海外移転で貨物取扱い数量が
減少してきたことに、歯止めがかかるのではないかと期待されているわけです。
もともとこの計画は、2005年の国土交通省のプロジェクトである「スーパー中枢港湾」に
阪神港(神戸港、大阪港)が指定されたことが大きな契機でした。
スーパー中枢港湾とは、釜山港などアジアの主要港に比べて、日本の港のコンテナ
取扱量が低迷していることを打開しようとして、国土交通省が全国で数港を指定して、
国際拠点港として育成しようとする施策です。
パナソニックのプラズマディスプレイパネル工場が尼崎にでき、またシャープの液晶
工場が堺にできるなど、大きな工場の進出がめざましい大阪湾地域ですが、これらの
期待にこたえられる物流拠点としての真のスーパー中枢港湾になれるかどうか、
今後の制度、システム、設備の充実が要求されています。
■ 2. 山崎発、経営を考える
<修羅場の効用(その10)・・・頭を空っぽ(自由)にして聞いているか?>
前回は、「10のうち8、聞かなければならない」理由の第一として、
「自分と異なる部分を他人の中に発見する」
ことにより次の成長に活かす、という点についてご説明をしました。
前に「10のうち8聞く」のご説明に会議の例を取りましたが、もちろんこれは会議だけの
話ではありません。
むしろ、会議では、一定の時間内に何らかの決定を行うことを目的としている場合も
少なくないでしょうから、会議以外の、俗に「雑談」や「何気ない会話」(インフォーマル・
コミュニケーション)と称する場合に、より「聞く」ことが重視されることになると思います。
また、「10のうち8」は決して時間だけの問題でもありません。
最初自分がちゃんと聞いているかな、とセルフチェックをする際には、時間を基準に
するのもよいでしょうが、その本質は、「話す」ことよりも「聞く」ことに4倍のエネルギーを
注いでいるか、という比喩的表現です。
では、なぜ4倍ものエネルギーが必要か、それは言うまでもなく、「異なる部分を発見する」
にはそれだけの努力が必要だ、ということなのです。
では、その努力やエネルギーの中身は何でしょうか。ここに重要なポイントが満ち溢れて
いることになるのですが、今回は、その一つ目のポイントについて考えてみましょう。
それは、
限界まで「頭を空っぽ」にして聞いているか、
という点です。
われわれは、ものごころついてから長い年月の間に、世の中のさまざまな前提を受け
容れて、育ち、考え、生活をし、仕事をしてきました。いわゆる「常識」「定説」「知識」と
いわれるものです。
さらにそれらの「常識」「定説」「知識」をもとにして、実際にいろいろな経験をすることに
より、自分なりの考え、組織の中での思想、いわゆる「固定観念」「既成概念」と呼ばれ
るようなものを生み出し、所有しているはずです。
そういったさまざまな前提を、可能な限りいったんゼロにして、他人の話を聞くことが
できるか、これはきわめて困難なことであり、重要なことだと思います。
人間は自己防衛本能を持っているがゆえに、どうしても自分の前提を忘れることが難
しい、忘れるどころか、自分の考えをいかに主張し、相手を説得しようか、などと考え
ながら聞いている・・・。特に、上司が部下から、親が子供から、先輩が後輩から、
先生が生徒から、など、俗に言う目下のものから聞く場合に、こういう傾向が強くなる
のですが、これでは、結果として、成長に活かすような発見には至りません。
このことを私が重視する究極の理由は、この「頭を空っぽ」にできるかどうかを、
自分の頭を解放し、「真の自由」を取り込む能力
ととらえているからです。
過去のさまざまな前提から自分の考えを解き放つことができる能力こそ、人間成長の
基本にある、そして空っぽにできるから、また新たな前提(「定説」ではなく「仮説」)を
どんどん受け容れる「真の自由」を獲得することができる、と私は考えています。
コップに入ったジュースをいったん空っぽにして、コーヒーでも、ミルクでも、お茶でも、
なんでも自由に入れてみることができる能力です。自分の前提でいっぱいなら、何も
入れることはできないのです。
ですから、よく出てくる「あなたの言うことはわかりますが、しかし・・・」という発言は、
頭を自由にできていない、自分の前提に縛られている証拠であって、おそらく本質的
には何もわかっていないのではないか、と感じます。「あなたの言うことがわかる」には
相当な努力が必要なはずですから、そんな簡単に「しかし・・・」とつながるわけはないと
思うのです。
コンサルティングをさせていただいていますと、
「先生のおっしゃることはわかりますが、われわれの場合には・・・」
「他社では成功しても、うちは違いますから・・・」
という表現に出会うことも多いのですが、ほんとうに成長意欲の旺盛な会社や人からは、
そういった言葉はほとんど出ない、それどころか、むしろ必死に学ぼうとさらに深く突っ
込んだ質問などをいただきます。これも、今回の話と共通するところがあるのでしょう。
というわけで、4倍のエネルギーが必要となる第一のポイントは
頭を空っぽ(自由)にして聞いているか?
というところにあるのです。
■ 3. 事業承継の真視点
<数種の株式・・・議決権制限株式(その2)>
前回は、議決権制限株式の歴史的変遷とその効果について、概念をご説明しました。
今回は、事業承継を通じて経営権の安全性を確保するために、実際にどのように運用
するのかについて、簡単な事例でお話しましょう。
たとえば、甲社の社長A氏が100%の株式を保有している会社で、A氏には相続人として
長男Bと次男Cがいたとします。長男Bは次期社長の予定ですが、次男Cは他社に勤務
していて、甲社を引き継ぐ可能性は、まずない状況だと仮定します。
ここで、現在A氏が持っている株式2万株について、さらに2万株の無議決権株式を無償で
割り当てたとします。この結果、A氏は、普通株式2万株と無議決権株式2万株の合計4万
株を保有することになります。
そこで、実際にA氏の相続が発生した場合には、後継者である長男B氏が普通株式2万
株を、後継者でない次男C氏が無議決権株式2万株を相続することにするというものです。
これにより、事業承継後、経営権をめぐって大きなトラブルが生ずる可能性を抑えること
ができるだろうというわけです。
ここでの注意点をいくつかあげておきましょう。
まず、相続時点で予定通りの相続をするためには、やはり遺言が必要になるでしょう。
遺産分割協議を経ることになると安定性が失われます。あるいは、生前に贈与をして
しまうのも一案です。もちろん贈与税がかかる可能性がありますから、相続税との比較
でどちらが有利かが判断基準のひとつになるでしょう。
二つ目の注意点は、無償で割り当てる場合に(上記の事例ではわかりやすくA氏が
100%を保有していたので問題ありませんが)もし、複数の株主がいて、ある一人の
人に無議決権株式を割り当てる、といった方法をとると、株主間で価値移転が生ずる
可能性が高くなりますので、贈与税や一時所得課税(場合によっては給与所得課税)
などが発生するリスクがあります。
三つ目の注意点は、相続により取得した株式の相続税における評価です。
上記のように同族株主同士の場合、一定の条件が満たされると「調整計算」による
評価が可能になりました。簡単に言えば、無議決権株式については5%の減額、その
反面、その減額した金額は、普通株式の評価に加算する、ということになったのです。
結局トータルの評価額では変わりませんが、経営に参画する意思のない人にとって
みれば、たとえ5%でも安いほうがいいわけですから、普通株式より無議決権株式の
取得を促す誘引にはなるかもしれません。もちろん、同族株主でない場合には調整
計算はありません。
今回は一番単純な例をとりましたが、事業承継における経営権対策でこの応用は
結構ポピュラーに用いられる手法ですので、ぜひ知っておいていただきたいと思います。
■ 4. おしらせ
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次回のテーマは以下の通りです。
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