いーかわらばん vol.278
- いーかわらばん
- 株式会社アウトオフィス
- 2007/06/21
- vol.278
▼INDEX▼
■ 1. 時の話題
100億を越える「ポイント引当金」の意味するもの
■ 2. 山崎発、経営を考える
年功序列と成果主義を弁証法から見ると・・・
■ 3. 事業承継の真視点
本年6月12日の日本経済新聞朝刊一面記事について
■ 1. 時の話題
<100億を越える「ポイント引当金」の意味するもの>
ヤマダ電機の連結貸借対照表をインターネットで覗いてみますと、流動負債
の部に、「ポイント引当金」という項目があります。その金額は、なんと、
平成18年3月31日現在 139億57百万円
平成19年3月31日現在 126億19百万円
となっています。
同じくビックカメラについては、
平成17年8月31日現在 95億34百万円
平成18年8月31日現在 113億53百万円
の「ポイント引当金」が計上されています。
ここでいう「ポイント」は、ご存知のように、われわれが家電量販店で商品を購
入した時に、10%、15%といった計算でポイントカードに付き、次回購入時に値
引き対象となるものです。
もちろん企業会計上は、消費者がそのポイントを実際に使うまでは利益控除
項目としては実現しません。しかし、「売上の10%が最低水準」とまで言われる
ようになると、将来の売上をマイナスに導くリスクについては、無視できる金額で
はなくなってきている、したがって引当金計上を余儀なくされる、ということなの
です。
もともと、このポイント制は、マーケティングの視点から見れば、カードを作る際に
住所、氏名などを記入することから、顧客をワントゥワンで管理し、囲い込みを
したり、顧客差別化(ヘビーユーザーとそうでないユーザーとで対応を変える)に
つなげるためのものでした。
しかし、家電量販店のポイントのみならず、航空会社のマイレージ、各交通機
関や小売等の相次ぐ電子マネー化によって、今後は、ポイントの交換、といった
事態にまで進展しそうな気配で、既にそのようなサイトも存在するようです。
ポイント制といえば聞こえはいいですが、これだけ乱立してくると、この本質は、
「値引き合戦」です。質が要求される時代にあって、企業にとってこのままの状態
でよいのかどうか、きわめて疑問です。
■ 2. 山崎発、経営を考える
<年功序列と成果主義を弁証法から見ると・・・>
前回は、
弁証法的視点5 反転現象は、両者の融合化、類似化をもたらす
についてお話をいたしました。
この例を国家レベルで考えますと、たとえば、互いに反目した資本主義と
社会主義、共産主義とは、50年という年月を経て、互いに融和してきま
した。
たとえば、その間には、資本主義側でも、修正資本主義といったかたちで
社会主義的要素を取り入れたり、共産主義側でも、市場経済を取り入
れたり、といった実験が繰り返されてきたわけです。
より企業経営的な例を挙げましょう。
たとえば、5.6年前に全盛を迎えた「成果主義」人事制度です。
これは、「失われた10年」の言葉に象徴されるように、日本企業の経営が
低迷した中で、新しい時代に対応するためには、年功序列や終身雇用と
いった従来からの日本的経営にどっぷりと浸かっていてはダメだ、各人の
成果に応じて給与や役職が決められるべきだ・・・、と大雑把に言えばこの
ような論拠に基づいたものでした。
しかし、初期段階における「成果」は、単なる結果数字を想定したものが多く、
ある意味で、フルコミッションや野球の年俸制をイメージしていたようです。
私などは、「成果」を数字で表すこと自体、いずれ必ず本質的に矛盾を生ず
る、として、成果を生み出すプロセスや組織に注目して、人事制度を構築す
ることをずっと貫いています。
経済が低迷している理由の一つを、日本的経営に求め、その反転現象とし
て、成果のみに注目しよう、といった考えが新鮮に映って一時的に多くの人
を魅了したとしても、いずれ必ずそこに潜んでいる矛盾が表に表れてくる
はずだ・・・
では、その段階で全くもとと同じ年功序列に戻るかというと、決してそんなこ
とはない、ある程度年功的要素を織り入れながらも、成果ということばを一
つのキーワードにして、
・真の成果とは何か、
・個人にとって成果はどのような意味を持つか、
・成果を意識してやりきる組織やプロセスはどのようなものか、
といったところにメスが入り、結果として両者を融合したあたらしい仕組みを創
り上げる必要があるだろう・・・
講演でも盛んに申し上げましたが、以上が当時から現在まで、一貫してずっと
私の考えていたことであり、これも弁証法的視点に基づくものだったのです。
■ 3. 事業承継の真視点
<本年6月12日の日本経済新聞朝刊一面記事について>
6月12日付の日本経済新聞朝刊の一面に掲載されました、
「同族会社株の相続減税
非上場対象 中小の継承支援」
と記された見出し記事は、未上場企業オーナーにとっては、大変インパクトのあ
るもので、多くの方から質問をいただきましたので、概要を記しておきます。
今回のこの記事の内容は、2007年末にまとめられる与党税制改正大綱に盛り
込む方針で、自民党の事業承継問題検討小委員会が「事業承継円滑化特
例法案」で制定しようとしているものです。
骨格としては、同族株式の80%減額のほか、事業用資産について、後継者以
外の相続人の遺留分放棄をしやすくする旨の改正も記されています。
皆さんの注目を集めた同族株式の80%減額については、具体的な評価方法
はまだ全く示されているわけではなく、事業用や居住用の宅地については、一定
の要件を満たすと80%の減額が今でも認められていることから、その数字に合
わせたものと思われます。
いずれにせよ、20年来主張していましたように、非上場株式は換金価値のある
財産ではなく、その実態は、金銭的価値に置き換えられない「経営権」である、と
いうことが、昨年の新会社法改正を経て、税務的にも少しずつ認められる方向
にあるように思います。
ただ、まだ自民党案の段階ですので、記事にもありましたように、600億円規模の
減税になることから、財務省の抵抗も大きくなるだろうと予測され、この法律が
通るか、流れるか、あるいは修正されるか、は全くわかりません。
したがって、現段階では、法改正の行方に注目していただくとともに、税金対策
を目的とするためだけの自社株移転(譲渡、贈与)は、明らかに今年実行した
ほうが有利な場合を除いて、しばらく静観しておいていただきたいと思います。
■ 4. おしらせ
山崎修一オープンセミナーのお知らせ
日時:6月27日(水) 13:30~16:30
テーマ:『日本型成果主義経営はこう創る』
お問い合わせ:神戸商工会議所 078-303-5808
http://www.kobe-cci.or.jp/seminar/jinzai/070627_seika.html
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次回のテーマは以下の通りです。
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