いーかわらばん vol.262
- いーかわらばん
- 株式会社アウトオフィス
- 2007/02/22
- vol.262
▼INDEX▼
■ 1. 時の話題
<MBA教育の弊害?>
前回のかわらばんの「今月の本棚」で、『H.ミンツバーグ経営論』を取り
上げて解説したところ、多くのお客様からご質問をいただきました。
そのほとんどは、ミンツバーグの著書である『MBAが会社を滅ぼす』につ
いて、「なんでそう言えるの?」というものでした。
ミンツバーグがどのように考えているかは、彼の著書を読んで、じっくりと
考えていただくことがベストですが、私なりにミンツバーグの考え方のポイ
ントを簡単にまとめておきたいと思います。
(といいながら、私自身の主張も多分に入っていますので、ご了承くだ
さい)
まず、マネジメントの教育で重要なのは、手法でもなければ、科学的
分析でもなくて、実践である、という視点です。
大きな書店に出かけていって、「MBA関連」の棚を見ると、戦略、マー
ケティング、財務、人事・・・と項目別に本が並んでいます。しかし、実
際の企業経営や組織運営は、こういった体系とは根本的に違う、より
総合的、複合的、情緒的な能力を必要とします。
結局、MBAでは、上記のような切り口から、専門職にふさわしい手法を
教えることに終始しているのであって、マネジメントを教育していることにな
っていないのではないか、というのです。
にもかかわらず、その部分で優秀なものが、さもマネジメントをマスターし
たかのような錯覚に陥る、これが大問題である、というわけです。
二つ目のポイントは、MBA教育の対象者についての考え方です。
先の『H.ミンツバーグの経営論』に記されている次のことばが最もわかりや
すいでしょう。(P.176)
経営の舵取りをしたことのない人々、それどころかわずか数年の実務
経験しかない人々を受け入れて教室で「経営者らしさ」を身につけさ
せようというのは、ばかげた試みである
もちろんこれは「マネジメント」の教育対象者であって、専門的技術や、マ
ナー、あるいは仕事に対する姿勢、といった基本的内容の教育のことを言
っているのではありません。
いずれにせよ、マネジメント教育は、マネジメントに携わっている人に対して
行うべきだ、というのがミンツバーグの考え方なのです。
最後に、以上のことを、無理やり一言でまとめるならば、
マネジメントの経験者に対して、マネジメントの実践を教育することにより、
真のマネジメント能力を身に付けることの可能性が高まる
というのが主旨なのです。ここで、「実践」の中身については、かわらばんの
「山崎発、経営を考える」でも繰り返しお話をしていますのでご参照ください。
■ 2. 山崎発、経営を考える
<経験は「熟考」を経て、血となり肉となる!>
前回と前々回の二回にわたり、共感的思考力と論理的思考力について
ご説明をし、
共感的思考力は論理的思考力の出発点であり、着地点である
という点についてお話をいたしました。
というと、論理的思考力はあまり重要でない、と考えてしまう向きもありますが、
これまた、とんでもなく危険な考え方だと思います。
過去二回にわたってお話したように、出発点を決め、着地点について選択
するのは、共感的思考力のなせるわざだとしても、その間を埋めて、ルートを
展開するには、論理的思考力が欠かせないからです。
そもそも、思考力を論理的と共感的の二つに分けたときにも、「あえて」という
単語を使ったように、この二つはそんなに明確に分けることができるものでない
ことは当然です。
重要なことは、論理的思考力には限界があるということ、そしてその限界の最
初と最後に共感的思考力が存在する、ということなのです。
とすると、ここから次のような大事な姿勢が見えてきます。それは、
ふっとした思いつきやひらめき、過去の経験を、可能な限り、とことん突き詰め
て考え、考えても考えても結論づけることのできない限界に達したとき、そこに、
また直観が生まれてくる
という点です。
この、直観→論理→直観というプロセスは、経営のみならず、スポーツや碁、
将棋、芸能をはじめとしたあらゆるもののレベルアップに必要でしょう。
ソール・アリンスキーというアメリカの公民権運動家の言葉に次のようなものがあり
ます。
「経験は血となり肉となる」というのは、大多数の人には当てはまらない。
さまざまな経験をしても、十分に消化しないため、単なる出来事の連続で
終わってしまうのだ。
経験は、消化、熟考、体系化、合成といったプロセスを経て、初めて血と
なり肉となる
この言葉は、「身につく」ということが、熟考から生まれることを、ものの見事に言い
表しています。
次回は、共感的思考力という言葉の「共感的」の意味と、高い価値観との関係
について考えて見ましょう。
■ 3. 事業承継の真視点
<中小企業のM&A>
会社分割の税務、会計的側面に入る前に、皆さんから質問の多いM&Aに
ついて、ここで簡単に触れておきたいと思います。
2006/11/16発行のかわらばんvol.250では、会社分割が行われた際の重
要な効果の一つに、富士山の頂上から見たように、「カット&ペースト」が
スピーディに行われる点を指摘しました。
ここ数年新聞紙上をにぎわせているM&Aなどはもちろんですが、中小、中
堅の非上場会社においても、M&Aは非常な勢いで増加しています。
『中小企業M&A白書(2005)』によれば、買い手または売り手のいずれかで
非上場会社が関わっているM&Aは、
1997年 472件
2004年 1610件
と3倍以上に膨れ上がっています。
また、売り手、買い手の双方が非上場会社であるものについても、
1997年 185件
2004年 602件
と同じく3倍を超えています。
また、すべてのM&Aの中で、非上場会社が絡んだものは、2004年で70%以
上に達しています。
では、中小企業において、M&Aはどのような目的で売買されているのでしょ
うか。
買い手の目的としては、
・ 新事業への進出
・ 技術力強化、シェア拡大
・ 救済支援
などをあげることができるでしょう。
一方、売り手の目的は、
・ 不採算部門のリストラ
・ 傘下に入ることによる生き残り
・ 資金調達の一手段
・ 後継者難
といったことが見られます。
この売り手の目的の中で、圧倒的に多いのが、実は、後継者の問題で、ここ
が上場会社のM&Aとの根本的な相違点です。
まさに、中小企業においては、事業承継の重要な一手法としてのM&Aが位置
づけられているといえるでしょう。
■ 4. おしらせ
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次回のテーマは以下の通りです。
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