いーかわらばん vol.153
- いーかわらばん
- 株式会社アウトオフィス
- 2004/11/17
- vol.153
▼INDEX▼
■ 1. 時の話題
<日本版LLC、 再論>
前回は、日本版LLC、LLPについてお話をさせていただきました。
そこでは、そういった新しい会社形態が、ベンチャーキャピタル、ジョ
イントベンチャー、あるいはベンチャービジネス等において、スピーデ
ィな活動を促進するといった効果が期待できる、といった趣旨のこと
をお話ししました。
この一週間で、3人の読者の方から、どうして、こういった会社形態が
スピーディな活動に繋がるのか、そのあたりがよくわからない、という
ご質問をいただきました。
実は、ここを説明すると、とても長くなって困ったな、と思い、割愛して
しまった部分で、この鋭いご質問に敬意を表し、今回、できるだけ簡
単に整理することにします。
実際には、まだ法定されていませんので、アメリカ等の例を前提に
想定するしかないのですが、一つ目はビジネスのスタートアップの
スピードです。
LLCは設立時にパートナーとの間で出資比率を決定し、運営合意書
を作成し、設立定款を当局(アメリカの場合は州務長官)に提出すれ
ば、その日からビジネスをスタートできます。
株式会社のように、銀行の保管証明書を添付して、登記簿謄本がで
きて、当座預金に入るのを待って・・・といった資本充実原則に則った
めんどうな手続はいらないのです。
二つ目は、意思決定のスピードです。
すなわち、株式会社においては、それなりの意思決定をしようと思え
ば、まずは取締役会で詳細を詰めて、それを臨時なり、定時なりの
株主総会に諮って、一定数以上の賛成を得なければなりません。
しかし、LLCの場合は、各企業に自由裁量権があり、運営合意書に
その旨を記載しておけば、設立者の意思により、なんとでもなります。
厳格に運営することも、緩やかにすることも自由です。
三つ目は、課税を含めた利益帰属のスピードです。
前回ご説明したように、企業の収益は、参加した個人にダイレクトに
反映します。したがって、これもまた合意してルールを決めておけば、
どれだけの収益があがれば、どれだけの恩恵にあずかることができ
ると直ちにわかり、参加貢献のモチベーションは非常に高いものとな
ります。アントレプレナーシップを持つ者が集まるには最適な、成果
志向の強い組織ということができます。
もちろん、長所もあれば、短所もありますが、アメリカ、カリフォルニア
州においては、1998年に登録されたLLCがざっと25,000件だった
のに対し、2002年には、38,000件近くに増加しています。
アメリカで簡潔だった制度が、日本に持ち込まれるや複雑怪奇になり、
結果として機能しにくい、といった例は結構多いのですが、さて、この
LLCはどうなるのか、先が楽しみです。
■ 2. 山崎発、経営を考える
<「おこぼれちょうだい経済」とは?>
ここでも、前回ご説明した中で、「おこぼれちょうだい経済」とはどうい
うものか、というご質問をいただきましたので、今回はその部分をお話
しします。
ナンバーワン企業でなければならない理由は、前回、詳しく説明をいた
しましたが、次のような例でお話しするとわかりやすいと思います。
これに近いことは実際にあったのですが、ある会社A社の業界のマーケ
ットサイズが、たとえば2000億円だったとして、ナンバーワン企業A社
は50%のシェア、すなわち1000億円を売り上げていました。2番目は
500億円、3番目は300億円、残りの200億円を数社が分け合ってい
る、といった構造でした。
この業界が成熟、縮小経済の波をもろに受け、5年後、全体のパイが
1400億円と70%に縮んでしまいました。それでもA社は、頑張って、依
然として1000億円をキープしています。
では、2位企業はどうなったでしょうか。いくら頑張っても500億円は無
理です。全体のパイは1400億円で、1位が1000億円をキープする限
り、400億円の売上しかできないのです。でも、5年前に比較して80%
ですから、業界全体の70%からすれば、まだ、よし、としましょう。
では、3位以下は・・・? 残念ながら、すべて倒産か廃業に追い込まれ
たのです。無理もありません。もうパイは残っていないのですから・・・。
これが、成熟・縮小経済の怖さです。ナンバーワンか、ナンバーツーし
か残れない、二強時代といわれるゆえんです。その2社に顧客のご指
名が集中してしまうのです。
では、これが、成長経済ならどうでしょうか。
たとえば、最近の中国、かつての日本のように、年率8~10%も成長
したとすると、5年後には、1.5倍くらいのパイになる計算です。
2000億のマーケットは、3000億円にふくれあがります。
それでは、この場合、1000億円の売上だったナンバーワン企業は、
全体が3000億円になったからといって、その増加分1000億円をすべ
て吸収するだけの設備投資ができるでしょうか。倍の設備投資、それは
あまりにもリスキーです。せいぜい、市場の伸びと同じ1.5倍、すなわち
1500億円くらいの売上が限度でしょう。
すなわち、1000億円増えたパイのうち、第1位企業は500億円程度
しか、吸収できないのです。その吸収できなかった分は、第2位企業へ、
第2位で吸収できなかった分は第3位へ、と次々にこぼれてくるのです。
これが「おこぼれちょうだい経済」です。わかりやすさから、数字で説明
しましたが、もちろん、質的レベルでとらえなければなりません。われわ
れは、成長経済において、象徴的に表れていたこの「おこぼれちょうだい
経済」にあまりにも慣れすぎた感があります。
一生懸命、我慢していれば、いずれいい時期が来て、おこばれちょうだ
いができる・・・それは精神論としては大事ですが、実際には、一生懸命
「我慢」するのではなく、一生懸命、「真っ先に」顧客に指名される何か
を創り出さなければならない、それが成熟時代の経営です。
■ 3. 今月の本棚
<『「わかる」とはどういうことか』 山鳥 重 著 ちくま新書>
われわれはどんなときに「あ、わかった」「わけがわからない」「腑に落
ちた!」などと感じるのだろうか。また、「わかった」途端に快感が生じ
たりする。そのとき、脳では何が起こっているのか・・・脳の高次機能障
害の臨床医である著者が、自身の経験(心像・知識・記憶)を総動員し
て、ヒトの認識のメカニズムを、きわめて平明に解き明かす刺激的な
試み。
以上が、裏表紙に書いてあるこの本の紹介です。
第1章では、知覚と心像について、第2章では、記号と言語について、
そして、第3章で、「わかる」ための土台としての記憶について整理して
います。
第4章は、「わかる」にもいろいろある、という見出しで、
1.全体像が「わかる」
2.整理すると「わかる」
3.筋が通ると「わかる」
4.空間関係が「わかる」
5.仕組みが「わかる」
6.規則に合えば「わかる」
という六つの「わかる」対象を説明しています。
さらに第5章は非常に参考になるのですが、どんなときに「わかった」と
思うのか、というテーマです。
1.直観的に「わかる」
2.まとまることで「わかる」
3.ルールを発見することで「わかる」
4.置き換えることで「わかる」
の4通りのパターンを整理しています。
そして、第6章の、「わかる」ためにはなにが必要か、終章の、より大きく
深く「わかる」ために、で結ばれます。
表紙にこんな言葉があります。
・・・よくわかるためには自分でわかる必要があります。自分でわからない
ところを見つけ、自分でわかるようにならなければなりません。自発性と
いう色がつかないと、わかっているように見えても、借り物にすぎません。
実地の役には立たないことが多いのです・・・・・・
最終的には「自発性」・・・ぜひご一読ください。
■ 4. おしらせ
山崎修一オープンセミナーのお知らせ
日時:11月17日(水) 13:00~18:00
テーマ:『5年先の自社を支える新事業の成功と失敗の分かれ道!』
お問い合せ:株式会社ジェイック
詳しくは:http://www.jaic-g.com/seminar/1117.html
日時:11月18日(木)13:30~16:30
テーマ:『勝ち組企業が実践する強い会社の資金管理のツボ』
お問い合せ:神戸商行会議所
詳しくは:http://www.kobe-cci.or.jp/
日時:12月8日(水)15:00~17:30
テーマ:『きちんと承継「オーナー経営」を守り抜く処方箋』
お問い合せ:ビジネスエージェンシー 090-1021-0421
詳しくは当社ホームページをご確認下さい。
アウトオフィス及び財務のお客様へのお知らせです。
6月から、簡易監査を実施しています。
重要な項目の監査はほぼ終了致しました。残り貸借対照表上勘定科目
特に経過勘定に関する監査にに入らせて頂きます。
ご協力お願い致します。
担当:財務指導部 山本雅文
いーかわらばんのバックナンバーをホームページに掲載しております。
途中購読の方で興味のある方は弊社ホームページをご覧下さい。
http://www.nksy.co.jp
次回のテーマは以下の通りです。
- 1. 時の話題
- 2. 山崎発、経営を考える
- 3. 事業承継の真視点
- 4. おしらせ
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