いーかわらばん vol.121
- いーかわらばん
- 株式会社アウトオフィス
- 2004/03/10
- vol.121
▼INDEX▼
■ 1. 時の話題
<一人あたり経常利益2000万円超!>
3月5日(金)にSMBCコンサルティング主催で、『新規事業の発掘と
立ち上げ方』という私の6時間セミナーがありました。
50名を超える経営者の方にご参加いただき、また、アンケートの
評価も、かなり高かったとのことで、受講いただいた方には、心よ
りお礼申し上げます。
今回は、ゲストスピーカーとして、元株式会社ミスミの副社長である
猪熊洋文氏をお迎えして、私との対談も含めて進行させていただき
ました。猪熊氏とはこれで、すでに5回目くらいの対談になります。
講演終了後、「皆さん、率直に感じたことは?」という私の質問に対
し、受講者の方々があげたなかで多かったのは、次の二点でした。
第一点目は、真の「顧客思考」について、思い違いをしていたのでは
ないか、という点です。自分たちの技術や商品から顧客を見ていた
のはないか、顧客の真のニーズとか言いながら、実は、供給者の都
合で見ていたのではないか、というものです。
もう一点は、ミスミやアスクルで、一人あたりの経常利益が2000万円
を超えている、という事実です。もちろんセブンイレブンのように4000
万円といった会社もありますが、「目線の高さ」というものを、再認識
せざるを得なかった、という点です。
私は、常に申し上げるのですが、「いずれ、最低一人あたり1000万
円の経常利益を出すビジネスをやりましょうよ」と。
モノがカネを生み出す不動産業でもなく、カネがカネを生み出す金融
業でもなく、ヒトがカネを生み出すビジネスにおいて、自分の給料も
経費も引いて、1万円札を1年間で1000枚残そうと思うと、発想は根
底から変わります。無理だと思えば、多分永久に無理でしょう。
今、自分たちのビジネスにおいて、最低一人1000万円、できれば、
2000万円を稼ごうと思えば、何が必要か、もう一度考えていただく
ことを、あえて、強く、お勧めしたいと思います。
■ 2. 2. 山崎発、経営を考える
<仮説を生み出す検証>
今回は、「深く考える」ということについて、「深く考えて」みましょう。
昨年の秋口、私のあるお客様の会議に出ておりますと、「なぜ売れ
なかったんだ?」という社長の質問に対し、事業部長が「冷夏のせい
です!」と自信をもって答えていました。
会議主席者の半分は納得し、残りは「あーあ」という表情。納得した
方々の経営的レベルの低さには、救いようがないものがあります。
私は思わず心の中で笑ってしまいました。というのも、私が常日頃
申し上げている、
悪いときの言い訳には究極的には3種類しかない、自分が悪い
か、他人が悪いか、運が悪いか、の3種類。この中で、他人が
悪い、運が悪い、といっている人に成長はない!
という言葉が、ズバリ当てはまってしまったからです。
事業部長はまさに、私のせいではない、冷夏になって運が悪かっ
た、と言っています。では、なぜ、この事業部長に成長はないので
しょうか。
もちろん、他人が悪い、運が悪い、といっている限りは、私は悪く
ない、といっているわけで、自分は変わらなくていい、といっている
人が成長するわけはありません。
が、そのことをより経営的表現に置き換えると、この考え方からは、
何一つまともな仮説が生まれて来ない、ということになるのです。
この会議がもし「冷夏のせい」で終わってしまったら、そこから出て
くる方針は、「来年は暑い夏であるように神様にお祈りしよう」では
ないでしょうか。
これは、非常に浅い考えです。たとえば、別のある事業部長は、
売上が上がらなかった真の理由を、
リスクマネジメントの不徹底。すなわち、より細かな平均気温の
設定ごとに、店頭の品揃えの一部を3日間で入れ替える、とい
う対応が遅れてしまったことによる機会損失額が○○円ある、
という反省をしているわけです。
レベルの差は一目瞭然ですが、「深く考える」ということの重要な
一つに、
「次の、意味ある仮説を生み出す検証」
ができるかどうか、という点を、ぜひご認識いただきたい、と思います。
次回は、「意味ある仮説」とはどういうものか、という点を通して、
「深く考える」をさらに「深く考えて」みます。
■ 3. 今月の本棚
<『虚妄の成果主義』(高橋伸夫著 日経BP社 1,600円)>
現在「成果主義」と呼ばれているもののほとんどが、リストラの
ための制度である、という点、また、客観的評価なんてものが
ほとんど意味を成さない、という主張にも共感します。
さらに、心理学者のエドワード・デシによる「内発的動機づけ」
の理論、金銭的報酬の限界、仕事の内容で報いる、という点
も、まさにその通りだと思います。
しかし、この本を読んで、私自身はどうもしっくり来ません。
しっくり来ない理由の第一は、1990年以降の日本が苦境の
状況にあり、同じ戦中、戦後の苦境の時期にできた年功制
が、なぜ今の時期にできないのか、と言っている点です。
私は同じ苦境といいながら、経済社会のファンダメンタルズ
は全く別物だと思います。戦中、戦後の日本で、表参道の
ヴィトンや銀座のエルメスが飛ぶように売れていたでしょうか。
しっくり来ない第二点は、住宅ローンや車のローンが安心して
組めないような賃金体系の会社にいて、将来の見通しが立つ
わけがないから、10年先のことを考えて仕事をする人がいな
くなる、といっている点です。
私の経験からは、むしろ、ローンが安定して組める会社に
いる人よりも、そうでない人の方が真剣に10年先を考えてい
ると思います。また、10年先を保証してやる、うちの会社は
10年間大丈夫だ、なんて言っている経営者が一番危ない、
し、そんな保証などできっこない、と感じます。
ほんとうに現場で経営者として動いたことのない人のことば
のような気がしてなりませんが、私の読み方が表面的に過ぎ
るのでしょうか。
成果主義がダメだから、年功序列に回帰せよ、という議論
はどうも納得できません。従業員のほんとうの幸せは、その
会社に長くいることの安心感なのか、それとも、どの会社で
も通用する力をつけることなのか、その本質を考えるべきだ
と思います。
そのことは、また、今非常に形式的に把握されがちな「成果
とは何か」についても、メスを入れることになります。
なお、私の現在の成果主義に対する批判論文、
『成果主義の成果が上がらない理由』(先見経済15年4月号)
は、下記「おしらせ」に掲載したサイトにございます。
あわせてお読みいただき、より発展的に議論させていただきた
いと思います。
次回のテーマは以下の通りです。
- 1. 時の話題
- 2. 山崎発、経営を考える
- 3. 事業承継
- 4. おしらせ
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